Q4:後見人はどう選ばれるのでしょうか? 後見人は親が選べますか?
A4:申立人が家庭裁判所に申立書を申請します。家庭裁判所よる調査及び家事審判官による申立人や本人の面接をし、申立ての事情・本人の意思の確認 をします。
これらの調査を経て、裁判官が職権で類型(成年後見、保佐、補助)と後見人を決定します。親は後見人を選ぶことはできません。
[参考・引用文献:品川成年後見センター、パンフレット「あんしん生活」、2015]
Q5:後見人を代えることはできますか?
A5:成年後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる(民法844条)。
正当な事由とは、成年後見人が遠隔地へ転居した場合、成年後見人が高齢又は疾病のために後見事務を遂行できなくなった場合等である。
[引用文献:東京大学市民後見人養成講座、配布資料、2013]
Q6:裁判所の許可を得る必要がある事項は何ですか?
A6:被後見人の居住用不動産の処分
[引用文献:横浜家庭裁判所、成年後見人 Q&A、2015]
Q7:被後見人の財産から支出できないものは何ですか?
A7: ・後見人が被後見人の財産を私的に流用すること
・後見人が被後見人と全く別世帯であるにも係らず、後見人及びその家族の生活費を支出すること
・被後見人の不動産を売却してその代金を後見人自身、親族や知人の債務の弁済や不動産その他のものを購入するため
に費消することなど
・後見人自身、親族や知人への贈与
・後見人又はその親族への金銭の貸付け [引用文献:横浜家庭裁判所、成年後見人 Q&A、2015]
Q8:後見人ができない事項は何ですか?
A8: ・連帯保証人・身元引受人 ・医療同意(身内の親族の方にお願いする) ・遺言書の作成 ・結婚の承諾 (一身専属権):権利又は義務が特定人に専属し、他の者に移転しない性質をいう。 [引用文献:東京大学市民後見人養成講座、配布資料、2013]
後見人は法律行為に係る身上監護のみ行うので、事実行為である介護や看護は含まれません。
[引用文献:東京大学市民後見人養成講座、配布資料、2013]
身上監護に関する事務として ・本人の身上に係る法律行為 ・健康診断の受診 ・治療入院等医療に関する契約 ・介護サービス利用に関する契約等 があります。 [引用文献:NPO法人 地域ケア政策ネットワーク、市民後見人育成テキスト, 2013]
Q9: 賃貸アパートに一人住まいの成年被後見人が施設入所するにあたり、施設費用の捻出のため、この賃貸借契約を解除したいと考えています。どのようなこと に注意すべきでしょう か 1)。
A9:成年被後見人の「居住用不動産」を「処分」する場合には、家庭裁判所の許可が必要です。この「処分」には、賃貸借の解除も含まれます。
【根拠】民法852条、同859条の3、同876条の5、同876条の10、家事事件手続法39条
Q10:成年被後見人が、従前から株式投資・運用をしていた場合、成年後見人はどうしたらよいでしょうか 1)。
A10:成年後見人には、成年被後見人の資産を増加させる義務はなく、投資・投機する必要はありません。また、そのまま保有し続けることは原則として 問題ないとされています。
【根拠】民法644条、同859条
Q11:成年被後見人の所有する不動産に関し、新たに保険契約を締結することはできるのでしょうか。また、成年被後見人を被保険者とする生命保険契 約など、保険に関してどのようなことに注意すべきでしょうか 1)。
A11:成年被後見人の財産を不測の事故から守るため新たに保険契約を締結することは可能であり、またその必要がある場合も想定されます。
成年後見人は、保険の目的、保険料、保険金額などを総合的に勘案し保険契約の変更、解約あるいは新規加入を検討する必要があります。
【根拠】民法859条
Q12:成年被後見人の墓地・墓石等の購入費用を本人の財産から支払うことはできるでしょうか 1)。
A12:墓地・墓石等の購入については、成年被後見人の財産状況等を踏まえ、常識的な金額であれば認められます。
【根拠】民法859条
Q13:成年被後見人等が死亡した場合、成年後見人等として、葬儀、埋葬等を行う必要があるのでしょうか。また、仮にこれを行う場合、どのようなこ とに注意すべきでしょうか 1)。
A13:成年被後見人等に親族がいない場合、親族がいても遠方に住んでいる場合などには、成年後見人は、家庭裁判所の許可を得て、ご遺体の火葬、埋 葬に関する契約を結ぶことができます。
【根拠】後見登記等に関する法律8条、戸籍法87条、墓地、埋葬等に関する法律9条1項、民法697条、同699条、同700条、同701条、同 702条、同873の2
Q14:成年被後見人の財産を親族や第三者に贈与してもよいでしょうか 1)。
A14:贈与は、原則として認められません。
【根拠】民法644条、同859条、同863条、同869条、同887条
Q15:成年被後見人の財産から親族に対して金銭の貸付をしてもよいでしょうか 1)。
A15:親族への貸付とはいえ、貸倒れのリスクもあるので原則として認められません。
【根拠】民法858条
Q16:成年被後見人の財産から親族への生活費や教育費を支出してもよいでしょうか 1)。
A16:成年被後見人が親族に対し、扶養義務を負っている場合には、生活費用を負担することは可能です。
【根拠】民法752条、同877条
引用文献
1.日本税理士会連合会 日税連成年後見支援センター、税理士のための成年後見Q&A、平成29年(2017年)6月